水平線の向こうに⑧

会長の父、つまり曾祖父は材木屋だったが会長の代で建築業を起こし高度経済成長期にかけて成長していったんだ。途中から不動産会社も経営する事になりバブルの時期と重なり、かなりの業績を上げた。先見の銘がある会長はバブルがはじける前に売り買いをやめて、貸しビルの経営に切り替えた。そして、同時に飲食店の他店舗経営も始めたんだ。もっとも、飲食店は父がどうしてもやりたいと会長にねだって部門を作ったのだ。

私は今年で29歳だが、大学を卒業して3年間素性を隠し、他の会社で武者修行し我が社に戻り会長から、父の飲食店の店舗の設計、内装、企画を任された。父が考えたものは、コトゴトク成果をあがられず赤字だらけだったからだ。

ここで少し脱線して我が家について話す。     と隆一は水を飲んだ。

父は他に姉と妹が1人づついる。男が父しかいなかったためか、大変に甘やかされて育ち我儘で傲慢な人格形成に至った。さらに父は会長のような先見性、行動力、カリスマ性、など経営者にとって必要な資質は生まれつき持ち合わせていない。努力と鍛錬を幼少期から行えば、普通のビジネスパーソンぐらいにはなれたんだろうが………会長、隆がうなだれた。

それを補うためか、付き合いのある会社のお嬢様の中で抜きん出て学力、運動神経、語学力があり、弁護士の資格を有する私の母と結婚する事になったのだ。その頃は父もカナリのイケメンだったし、母もまんざらで無く最初は上手くいっていたんだが、私が産まれて2〜3年で、もう破綻寸前になってしまった。

何故かと言うと、父は大変に女グセが悪かったんだ。母は最初はよく泣いていたよ。だが、スグニ方向変換し、私をそんな人間にならないよう真剣に子育てに取り組むことにしたらしい。私は小さな頃から柔道や空手、ピアノなどを習ったよ。で、家に帰ると母が勉強を教えてくれた。母が偉かったのは、私の子育てと共に自分もスキルを磨き弁護士として自力で事務所を開いたことだ。そこで離婚したいと会長に相談した所、もう一人子供を産んでくれれば離婚しても構わないという事になり、私が12歳の時にジョンが産まれたんだ。母はジョンを妊娠するとアメリカに行きジョンをアメリカで産んだためジョンはアメリカ国籍と日本国籍を現在保有している。

母はジョンをアメリカと日本の両国で育てたかったのだそうだ。本当は私もそうしたかったらしいが、マア長男では実現不可能だろう。離婚はしたが、家にとどまり私とジョンの世話と養育、教育をそのまま続けることに合意した。もっとも、母は家にとどまったが父はそれよりずっと前にマンションを借りて家にはほとんど帰って来なかったから、離婚してもしなくても、あんまり関係ないような気もするが、そこが母の矜持なんだろう。

章一と隆は固まっていた。ジョンは     オー‼️マムズヒストリーね〜‼️       といい大爆笑していた。アツシはジョンの笑うツボが一向に理解出来なかったが、つられて笑ってしまった。隆一は話を続けた。

母も働いていたのでベビーシッターが来たがアメリカ人のお嬢様だったよ。会話が全てアメリカンイングリッシュだったためジョンは小さな頃からアメリカンイングリッシュと日本語を話すようになったのだ。今から考えるとイギリス人のお嬢様の方が良かったのではないかと思うが……私もおかげでアメリカンとの日常会話は出来るようになった。で、私が18歳になり、ジョンが就学時に母とジョンはアメリカで暮らす事になったんだ。母はアメリカの方と再婚してアメリカ在住だ。           イエース、マイクイズローヤー‼️セイムマム‼️           とジョンが叫んだ。

母の夫はマイクと言って、母と同じ弁護士なんだよ。2人で弁護士事務所を開いている。我が社はアメリカにスシを中心としたレストランを何店舗か出店しているので、法律的な事は、その事務所で対応してもらっている。

ジョンはこう見えても、カナリ知能が高く、今17歳だが大学4年生で今度大学院に行くかどうかを相談しに日本に帰ってきたんだ。自分が褒められると恥ずかしいらしくクッションで顔を隠すジョンをアツシは、面白い人だなぁ〜〜と思いながら見つめた。

さて、話を戻すが、私が会長から店舗出店を任されて最初に手掛けたのは高級な回るスシ店。その内装を武者修行で知り合った     田所   俊さんに頼んだんだ。       僕のお父さん⁉️        そう、アツシ君、君のお父さんだ。君のお父さんは、たたき上げで大変に優秀な内装業者で、勉強家なんだよ。

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