リアルエステート仮面6

「ただいま〜‼️」

まだ、日があるうちにリツコは家に帰ってきた。超上機嫌だ。「オッツ‼️丁度パパが帰ってる‼️ラッキー‼️」玄関に武士が履くような草履がある。リツコはリビングに走っていくと「パパ~~~~お帰り~~~~‼️」と言って素浪人のカッコをしてソファーに座っている父親の膝にまたがり抱きついた。

「オ~~~~~~リッちゃん‼️マイ、天使ちゃん‼️会いたかったよ〜〜‼️」と言ってリツコをぎゅーと抱きしめた。

リツコの父親は、現在チンドン屋さんをやっている。速水さんが言った通り定年までは、首都圏にたくさんある有名な銀行で働いていた。最も最後の方は子会社に出向のような形で働き、最後に家の近くの支店に戻り定年を迎えたのだった。

リツコの2歳違いの兄がまだ小学生の頃、母親も父親もかなり教育熱心だった。有名な私立大学までエスカレーターで行ける中学校に入学させたかったらしい。母親に至っては、兄の友人にまで口を出し、あの子と付き合うのはバカになるからやめなさい。この子は親が貧乏だから貧乏が移るからやめなさい。と信じられないような命令をしていた。兄はもともと優しい思いやりのある子供だっただけに勉強だけならともかく、人間として如何なものかという事を言う母親に深い絶望を感じていたらしい。

兄が6年生になったある日、家庭訪問で若い女の先生が家に尋ねてきた。母親は何が気に食わなかったのか、玄関から家にもあげず、一生懸命な先生の暖かい言葉掛けもまるで流し、最後に「先生、先生はまだ独身なんでしょう❓早く御結婚なさって子供をおうみになったらイカガ❓」と言い捨てて玄関のドアを閉めてしまったのだ。先生が帰った後、「何様のつもりかしら?全くイヤ~~~~ね~~~~」と、大きい声でヒトリゴトを言った。背後で、全て聞いていた兄は「うるせ〜‼️このクソババア‼️」と叫びワンワン泣きながら部屋に閉じこもってしまったのだ。母親もさすがにヤバイと思ったのか、ゴメンねゴメンねとドアゴシに謝ったけど兄は家族が寝静まった後しか出てこなくなった。

あっという間に3年が過ぎた、ある日曜日に、ガリガリに痩せてホームレスのようになった兄が出てきて父親に言った。「お父さん、僕アメリカで寿司職人をやってみたいんだ。」父親はワンワン泣きながら兄を抱きしめ「ウンウン、やってみな。なんでも協力するよ…………」と言った。それからの兄はスゴかった。毎日ロードワーク、筋トレ、自分が出来る限りの英会話の練習、何でもするからと言って自分で修行先の寿司屋を見つけてきた。。3年経つ頃には、部屋からのそっと出てきた兄とは、どこから見ても別人になっていた。

身長176cm,体重75kg,日焼けして鍛えられ引き締まった筋肉質の身体。三角形に整えられた眉、短く切り整えられた髪型。祭りが似合う感じの青年になっていた。18歳になった日に兄はアメリカへと単身旅立って言った。見送りに家族全員で行った帰り道、父親が言った。「僕ね〜〜定年までは銀行頑張るよ。早期退職もしない。でも、退職したらチンドン屋さんをやるよ。それで全国を廻りたいんだ。」「私はどうなるのよ‼️」母親が叫んだ。家族全員で母親を見た。「わかったわよ…………」と母親は言った。

それで、父親は退職金で2人雇って全国を廻っているのだ。今日の衣装は父親がお気に入りの素浪人なのだった。

「パパ~~~~リツコねえ、今度お買い物したいの~~~~。」「そうなの~~~リッちゃん、何買いたいの~~~~」「これ~~~」と言って、マイソクを出した。一目見るなり。「リツコ、ここにちゃんと座りなさい。」といきなり銀行員に戻って真面目な顔で言った。ヤバイとリツコは察し、ソファーにキチンと座り直した。

「君、これをどこの誰に勧められたの❓」「エ~~~~~~っと、00駅の前の不動産屋さんの速水って人~~~~」「あーあの男か…………」ナント、父親は速水さんを知っていた。「速水って男は随分と強引な商売するんで有名だよ。銀行にも随分とねじ込んで来たことがあったよ。せっかく稟議を通しても、違う銀行の方が金利が安いとか借りられる年数が多いとか断るんだ。挙句に、あの銀行は使えないとか動きが遅いとかセミナーで言ったりするんだよ。」リツコはビックリした。と同時に、さすがパパ‼️っと素浪人のすがたの父親を尊敬の眼差しで見つめた。「わかった‼️買わないよ‼️」「さすが、リッちゃん、飲み込みが早いね~~」と頭を撫でた。「パパ、一緒にパスタ食べに行こう」「オ~~~~~~行こう行こう、このカッコでいい❓」「イイヨ‼️超クールだよ‼️」と言って2人で父親の愛車のワーゲンのバスに乗ってパスタを食べに出かけていった。母親がリビングに来て「夕飯なにがいい❓」と聞いたが誰もいなかった。「全く‼️」とつぶやいた。

「あー楽しかった〜‼️パパ、又行こうね〜‼️」「行くよ〜〜リッちゃん、今度は中華ね‼️」という会話をした後、自分の部屋にいった。リツコは「そうだ、カトウさんに電話してみようっと」「もしもし〜、あ、あの今日セミナーでお会いした……」「アッツ‼️リツコさんですね‼️嬉しいな~~~連絡お待ちしていました。個別相談、どうでした❓」リツコは紹介された物件と連帯保証人の話、父親の話をした。「それは、良いお父様ですね〜〜安心しました。リツコさん、大家さんは思ったより大変ですから最初は手持ちのお金で買える中古の一戸建てとか分譲マンションが良いですよ〜〜」「ありがとうございます。今度、ゆっくり話聞かせてください。」「いつでも、いいですよ。それはそうと、あの不動産屋さんで買うのはやめるでしょう⁉️」「アーそうですね〜〜明日断りの電話を入れます。」「そうですか、気になるので、又電話していいですか?」「わかりました」

次の日の朝一で、速水さんに断りの電話をした。「わかりました。残念ですが、仕方ありません。でも、渡した資料を返却して頂きたいので御座います。今日、お店が忙しいので申し訳ございませんが閉店後の7時に資料を持って来店して頂けますか?」「わかりました」さすがのリツコもチョット変だと思った。カトウさんに電話して、この事を言ってみた。「そんなこと言ったの?ただのコピーなのに。うーん、7時にお店か………」「あー大丈夫です。置いて、ソッコー帰って来ますから。」と言って電話を切った。

つづく

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