水平線の向こうに17

俊の車の後部座席にアツシとミユキとなぜかジョンが座った。隆一は隆と赤いベンツでマリのいるアパートに向かった。俊は久しぶりにマリに会うので、明らかに緊張している。

ミーちゃん、大きくなったね〜              お兄ちゃんも大きくなったね〜………ところで、この人なんでお兄ちゃんソックリナノ⁉️双子みたい‼️                 オー‼️へロー‼️プリーズコールミージョン‼️                ………何言ってんの⁉️この人変‼️               アツシは大爆笑した。            オー……ミユキちゃん、僕もお兄ちゃんなんだよ〜〜仲良くしてくれる⁉️ジョンって呼んで〜〜            …………犬ナノ⁉️               ワッツ⁉️                  アツシは大爆笑しながら                多分、近所の家にジョンっていう名前の犬がいるんだと思うよ〜〜               オーマイガー‼️まあいいや。ミユキちゃんになら犬でもなんでもOKよ‼️                  わかったよ〜〜‼️なんか楽しいね〜‼️ミーちゃん今日は最高だよ…………

そんな会話を聞きながら、俊は頭の中でマリに会うことばかり考えていた。

コンドコソ……コンドコソ……失敗しないぞ………考えろ考えろ自分………俊は自分に考えられる全ての場合を想定してイメージトレーニングした。
アパートの玄関をノックする。返事は無かった。ドアノブを回すとドアは開いている。

マリ………⁉️マリ………⁉️       

俊が部屋に入ると老婆の様にガリガリに痩せてボサボサの髪の女が壁に頭を軽くぶつけながら、ブツブツ独りで会話している。

マリ………マリなのか⁉️                  俊が近づくとユックリと女はこちらを向いた。虚ろな目、空いた口。

…………………………俊……………俊……………⁉️

見る見るうちに目に精気が宿る。           マリ‼️        俊はひざまずきマリを思いっきり抱きしめた。

俊‼️あんた………あいあい会いたかったよう…………‼️           マリは必死に俊にすがりついた。           ごめん‼️ごめん‼️マリ‼️ごめん‼️ごめん‼️愛してる………マリもアツシも愛してる………‼️オレがオレが悪かった。

俊、俊………アタシ……アタシ……… アツシを殴って………アタシの子供…………なのに、殴って蹴って………どこかに逃げた…………アツシ…………アツシ………

お母さん‼️                      アツシが駆け寄りマリの前にひざまずくと                 アアアアア………アツシ…………ゴメンナサイ………ゴメンナサイ………ヨカッタ生きてた……

それだけ言うと、マリはガックリと俊にもたれ意識混濁してしまった。             マリ‼️しっかりしろ‼️             

救急車を呼びましょう。          と隆一がすかさず119番した。救急車が到着しマリが運ばれ俊が付き添う。隆一が俊のバンを運転して全員を乗せ、その後を追った。

車の中でジョンが隆一に

ウィズアウト  ユーの曲の意味が今日、初めてワカッタヨ………             と呟く。           俺もだよ。          と隆一も返事した。

マリは極度の栄養失調だった。医者の話ではここ何ヶ月もマトモな食事はしていないだろうとの事だ。それを聞いてアツシは                 お母さん、そう言えばここ最近、食べてるの見た事ない………いつも、おじさんに気を使って……家のお金はミンナおじさんにあげてた………何十万かは返したと思うけど……            と思い出した。

点滴をして1時間ぐらいするとマリが目覚めた。

マリ………ここは病院だよ…………。アツシもミユキもいる。          と、突然ミユキがワーっと泣き出し

ママ、ゴメンナサイ‼️ミーちゃんがママ嫌いって言ったからパパと別々に暮らしてたんでしょう⁉️ミーちゃんのせいでママ、病気になっちゃた………

俊はビックリして

違うよ‼️ミーちゃんのせいじゃないよ‼️            大きな声で言って看護師さんに怒られた。           

 ミーちゃん、ママがバカだから、パパとケンカしたの。ミーちゃんのせいじゃないよ………ミーちゃん会いたかった………                マリが涙を流しながら小さな声で言う。

ホント⁉️ミーちゃんも会いたかった………ママ、大好きだよ…………ゴメンね、キライって言ってゴメンね……

俊もマリもこんな小さな子供に哀しい思いをさせて自分の至らなさに心が痛んだ。

大丈夫だよ。もうミンナ一緒に暮らすよ‼️マリ、こんな俺だけど、又一緒に暮らしてください。……オレ……オマエじゃないとダメなんだ………                  マリはチョット笑って、安心したように眠りについた。

今日はもう、患者さんをもう休ませたいんで帰ってくださいと言われたが、俊は残ると言って聞かなかった。隆一はじゃあ我が家でミユキちゃんとアツシ君は預かります。と言って帰ることにした。一旦アツシの家により、必要な物を取り、ベンツは隆が乗っていく。

押田家に帰り、夕食を食べると、アツシとミユキとジョンで鬼ごっこやらお馬さんごっこやらゲームやらを熱狂してやり始め、隆は大喜びでそれを眺めて笑い、隆一はさすがに疲れて耳栓をしてチョット離れてパソコンで仕事した。

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