水平線の向こうに15

そっくりな顔した弟達を見ながら、隆一は隆に向かって

会長、アツシ君のお母様と今度こそ、きちんと話し合いましょう。呼びつけるのではなく、きちんとこちらから伺うむねを連絡して向こう様のご都合のよろしい時にお邪魔いたしましょう。

………そうだな…………わたしは傲慢だった。章一の事も妻に任せっぱなしで………自分にはまるで責任が無いかのようにふるまっていた………お金を稼ぐ事、会社を大きくすること……いい父親である事は全く違うことだ………お金を稼げるといって、他がいいかげんでいいわけがない………      

章一が、わーっと泣き膝に顔を埋めた。それを見ていた隆一はチッと舌打ちして

会長……お祖父様……それは、ある意味では真実かと思いますが……人間は成長出来る生き物です。ダメだと思ったら自分を省みて、自分の至らなさ弱さを見つめ、人に学び、出来ない事は頭を下げ協力して貰える人材を探す事が大事だと自分は思っております。父は自分の力を良く把握して無いようです。どうでしょう⁉️この際、私の知人でお金も稼げるし体力、技術も培える仕事をしている者がおりますが、その人に託しては⁉️

章一はムクッと顔を上げた。        やるよ。お金儲かるんでしょう⁉️            もう笑顔である。隆一は再びチッと舌打ちして、         今すぐ、その人を呼びます。…………あー木崎さん‼️先ほどは、どうもお世話になりました。木崎さん、確か2〜3日後にベーリング海に行くって言ってましたよね⁉️1人お世話になりたい人材がいるんですが〜〜‼️ええ、今、ここにいます。ええ、すぐに迎えに来る⁉️わかりました‼️荷物は⁉️あーいらない‼️わかりました‼️お待ちしております‼️…………お祖父様、半年ぐらい鍛えてくださるそうです。

隆は、うんうんと頷いて        よかったなあ章一…立派な息子で…………うんうん……         うん、よかったよ‼️お父さん‼️                   と言う会話を聞きながら、隆一はメガネを持ち上げながらクチビルの左端で笑った。何分もたたないうちに木崎が風のように現れた。

オー‼️若旦那‼️オーこれは会長様まで‼️            木崎さん、この男です。遠慮なく鍛えてくださいね〜‼️          と満面の笑みで章一の腕を掴み木崎に渡した。木崎は章一を見た事が無いので因果関係がわからず             オイ‼️イクゾ‼️   と章一の腕を組み、すごい勢いで玄関に向かった。

若旦那、あっしに任せておくんなせえ‼️           あーよろしくお願いいたします。        と爽やかに章一と木崎に手を振った。

隆一は顔が広いなあ〜〜       と隆が嬉しそうに言うと           お祖父様、これで父も逞しくなって帰ってくると思います。            とうやうやしく会釈した。隆も一安心した表情でアツシに向かって

アツシ君、お母様と連絡できるかい⁉️             ………電話を貸してもらえますか…………            隆一が差し出すと、アツシは恐る恐る、マリに電話をかけた。コールしている間にアツシの顔色が悪くなっていくのがわかる。ジョンは心配そうにアツシを見ていた。

………あ、あのお母さん⁉️            にゃんだ‼️おメーどこいんだ⁉️           お、おじさん⁉️お母さんは⁉️             マリはヨウ……おメーが逃げてからセミの抜け殻みたいになっちったんだ………この2日食べ物どころか水も飲まねエ……ぼーっとして壁とブツブツ話してるんでよ〜〜オリャーもう付き合いきれねえ……警察も一回来たんだ………また来るってよ……ワリィけど、オリャーでてくで。家にある金は持ってくぞ。250万はおメーが大きくなった頃取りにくっからヨ。じゃあな。        あ、あの……    と言った時には電話は切れていた。

アツシは呆然と受話器を隆一に渡しながら 

お母さん………おかしくなっちゃったって………おじさんはでてくって………僕が大きくなったら250万取りに来るって………。            と聞き取れないような小さな声で言った。

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