水平線の向こうに11

回想の続き

どういう事なんだ。章一、きちんと説明しなさい。

ビンゴ大会のにぎわいが聞こえる。事務室になっている小さな部屋で社長の隆は険しい表情で言った。章一はオドオドしながら話し始めた。

マリちゃんは11年前、僕がやってたイタリアンレストランで働いてたのよ。綺麗だったから良く声をかけたけどまるで相手にされなくて悔しかった。ある日、旦那さんがバイクで事故ってお金がないってレストランでこぼしてた。周りもお金が無かったみたいだから途方にくれてたの。チャンスだと思って300万貸すから付き合わないって言ったのよ。そしたら、くれるなら付き合うっていうんで、マアイイかと思って。一回あって、300万渡したらサンキューって言って、その後は着信拒否。しまったと思ったけど、店も辞めちゃって、マア仕方ないと………

章一、おまえ、そのお金は店のお金か⁉️                ………マア、ええ…………       隆は大きく溜息をつき

呆れたヤツだ。田所さん本当にすみませんでした。     ……………アツシは社長さんの若い頃に似てますか⁉️…………        マリはさえぎるように                アツシはあんたの子だよ‼️こんなヤツの子なわけないよ‼️ネエ、コイツと関係したのは本当に謝るよ‼️ゴメンナサイ‼️ゴメンナサイ‼️あんたの病院代もらいたかったんだもん‼️                とマリは言うとワンワン泣き始めた。                       田所さん、DNA鑑定を…………        マリは凄い形相で隆を睨みつけると、         そんなことする必要ないよ‼️あんたの子だよ‼️こんな、こんなヤツの子じゃない………よう………信じて………       と泣きながら叫んだ。ワンワン泣くマリを見て、3人の男達は、もう何も言えなかった。

もう帰ります………     俊はワンワン泣くマリの腕をそっと掴み立ち上がらせると肩を抱き、事務室の外に出て車に乗って家に向かった。隆は、章一に向かって

私の育て方が本当に悪かった。馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、ここまで馬鹿だとは思わなかった。おまえは、もう何も仕事はしなくていい。生活出来るお金は振り込むから、あとは自分で切り開け。       章一は項垂れ、会場を後にした。

レセプションが終了した後ジョンは残った寿司を自分の桶に入れ         オーマイゴー‼️ ディスイズツークール‼️        と叫んでいた。隆一が隆に心配そうに寄り添うと、隆は顛末をざっと説明した。             DNA鑑定はなさらないんですか⁉️もし、自分の弟でしたら、引き取ってイロイロ教えたいと思うのですが………      ウム、章一はもう役に立たん。引き取りたいところだが……とりあえず田所さんに協力してもらいDNA鑑定だけはしたいものだ。            わかりました。俊さんに話してみます。             隆は頷いた。

ゴメンナサイ………ゴメンナサイ………マリは車の中でずっと泣きながら謝っていた。俊は、マリに言う言葉が見つからず        アイツラ、ちゃんと家に着いたかな…………           とボソッと言った。   

どうしたらイイんだろう?確かに、あの事故はひどかった……あの日もマリはとめた。もうバイクはやめてくれって。お兄ちゃんは泣いてたっけな。俺が悪かった……でも………どうすればいいんだ……アツシは多分俺の子じゃない………                  

車のヘッドライトが目にしみる。俊はもう何も考えたくなかった。

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