水平線の向こうに①

お前がいなくなれば、みんな上手くイクンダヨっつ‼️

アツシは、又殴られると思い、咄嗟に丸くなり頭を両手で覆った。母親は容赦なくアツシの頭といい背中といいどこかれ構わず思いっきり蹴った。目の奥がハレーションを起こしてる。殴られている間、アツシはこの間、図書館で見た美しい景色を思い浮かべていた。

アマルフィーと書いてあったけ。どこにあるのかな………

青い屋根、白い壁。そして空も海も青い。

オイ‼️いつまで殴ってんだよ‼️TVの音が聞こえねえだろ‼️     男が怒鳴った。    あー、あんた、ゴメンよ‼️  母親は蹴るのをやめた。   ケッツ‼️   とアツシを睨み男の隣に満面の笑みで座った。    オイ、暑苦しいだろ〜〜それより、ビール買ってこいよ。    アンタ〜〜お金は⁉️   小さな声で母親が男に聞いた。   凄い形相で男は母親を見ると、イキナリ顔をグーで殴った。   テメー‼️俺から金取る気か⁉️   ゴメンネゴメンネー……………   母親はアツシを見て、   オイ、アツシ、ビールとってきな。    と言った。     

またか……

アツシはノロノロと起き上がって、近くのスーパーに自転車で向かった。アツシは店員が見てない隙にカンのビールを2本ズボンのウエストに挟んでシャツを素早く被せた。何気なく店からでると急いで自転車に乗り全速力で家に戻った。

母親はこの半年、アツシにしょっちゅう万引きさせる。もちろん警察に捕まった事もあるし、出禁になった店もある。捕まる毎に、警察や学校には 涙を浮かべて   スミマセン、スミマセン  良く言って聞かせます………   と言うのだ。そして、家に帰ると、恥をかかせやがってと言って殴ったり蹴ったりするのだった。

家に帰ってビールを取り出すと、男が    冷えてねえじゃねえかよ‼️   と怒鳴った。ぼーっと立っているアツシをチラッと見て、まあいい‼️   と吐き捨てるように言ってビールを飲み始めた。
アツシは中学校3年生。3つ違いの兄と7つ下の妹がいた。兄は小柄なアツシと違って体格が大きかったので中学2年の頃から、年をごまかしてバイトして、たまに家にお金を入れたりしていた。兄は母親のお気に入りだった。

今の男は1年前からアツシ達が住んでいるアパートの一室に居つくようになった。兄と仲が悪く、良くケンカになった。だが、男もあんまり大柄でないので、怒鳴るけど兄に手をあげることはなかった。ある日、兄が母親にお金を渡した直後に   オイ‼️その金、こっちによこせ‼️   と男が母親に言った。母親は  チョット躊躇したが男にお金を渡すと兄は、   オイ‼️お前にもってきたんじゃねえんだよ‼️  とお金をひったくった。すると男は   ナニヲ…‼️と言いながら拳を上げたので、兄は思いっきり男を殴った。男はヌイグルミのように部屋の隅に転がった。   あ、あ、アンタ〜〜‼️と母親はすがりつき、兄に向かって    なにすんダ‼️    と叫んだ。兄は 、物凄く、泣きそうな顔になって黙って身の回りの物をバックに詰めると、黙って出て行った。

お兄ちゃん‼️どこ行くの‼️

とアツシは追いかけていくと、兄は涙を流して     いつか迎えに来るからな………       と言って去って行った。裸足のままアツシは兄の背中を見ながら、ワンワン泣いた。   それが半年前の出来事だった。

それからは、何か気に入らないことがある度に母親はアツシのことを殴ったり蹴ったり万引きさせるようになったのだった。

お兄ちゃん、いつ迎えに来てくれるのかな………。2段ベッドの上で布団にくるまりながら   

 明日は明日は    何もかも変わっていますように    

と念じながら眠りについた。

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