リアルエステート仮面10

リツコが新宿に行った時、ユウキは爽やかな真っ白の麻のシャツとリーバイスのジーンズで立っていた。リツコはユウキに駆け寄ると、左腕に自分の右腕を絡ませた。ユウキは照れ臭そうに笑った。映画は楽しかった。

夕飯を食べて、ユウキと別れてリツコは家に帰ってきた。「あー〜今日はいろいろあったけど、楽しかったよ。しかし、一体いつになったら不動産買えるのかなぁ」とリツコは独り言を言った。風呂から出て、スマホで何気なく不動産という言葉を検索していると不動産競売情報という文字が目に付いた。

「何だ~~~❓裁判所で不動産売ってるのか………アレ、コレまじ安い‼️」リツコはデカイ声で独り言を言いながら食い入るように画面を見た。

横浜地方裁判所「鎌倉か………チョット遠いなぁ〜〜でも、安いなぁ」bitというサイトにのっていた家は78万円だった。写真では結構な山の中だった。特別売却。つまり期間入札では入札は無く、特別売却が開始しても、まだ売れて無いのだ。「うーん気になる…………」リツコの頭の中はその物件の事で一杯になった。特別売却が終了するのは水曜日だった。「よし‼️明日超特急で仕事して、明後日の午後から見に行こう‼️」決心すると髪の毛を乾かして、スグに寝た。

次の日、リツコは又早く会社に行った。めずらしく上司も来ていた。「オ~~~~~~、リツコ君、早いね〜。ちょうどいい、この仕事やってくれる⁉️」「イイェッサ〜‼️」とリツコは大きい声で言うと、凄いイキオイで仕事をやり始めた。昼もほどほどにして、集中して仕事をして、その日のうちに8割は終わりになった。あー良く仕事した。と思いながら家までの道を歩いているとユウキから電話がかかってきた。

「あー、ユウキさん。私、凄い物件見つけたんですよ〜〜‼️」とリツコは78万円の家の事をユウキに言った。「エッツ‼️そんなのが残ってるなんて変だなあ。」「ユウキさん、私、明日チョット早引けして見に行こうと思ってるんです。」「エ~~~~~~‼️リッちゃん、止めなよ‼️」「大丈夫ですよー」「くれぐれも気をつけてね‼️」「わかりました。」とリツコは言った。頭の中は78万円の家の事で一杯だった。

次の日も、早く起きて会社に行き、超仕事をした。昼頃には終了して上司に見せた。若干の手直しが入ったが2時にはOKが出た。「リツコ君、この頃頑張ってるね〜‼️」「へへへへ、今日はこれで早引けしてもいいですか?」「うん、いいよ。又明日ね〜‼️」ヤッタ〜‼️リツコは満面の笑みで駅に向かった。電車の中で、ユウキに「これから偵察です‼️」というメールを送った。

鎌倉に着いた。スマホを頼りに歩いて行くと、ドンドン高台のうっそうとした、まるで別荘地のような場所に辿り着いた。「アレ〜……どこかなぁ………」写真の家は見つからなかった。リツコは途方にくれた。ふと、見ると、なぜかうっそうとした木の下に占い師が座っている。「よく当たる黄金の占い」と立てた札に書いてある。

「あのー…………お聞きしますが、ここの住所はどうやって行くんですか?」と聞くと「あー、ここね………ここはこの道を真っ直ぐに行くと辿り着ける……………でも、あなた、ここでどうするつもりなの?」「イヤ〜、そのー家が見たいなと………」「そう…………どうしても行くつもりなの?………」「エ~~~~~~エッツ、まあ………」「そう……ならば、この杖を貸してあげるわ。キット役にタツ………何かあったら、一番好きな人の事を強く想うのよ……」と杖を差し出した。「ありがとうございます」と言って、リツコは占い師、黄金の指差す方に歩いて行った。

道はしばらく行くと、森のように鬱蒼としてボコボコと出た木の根、タレ下がった枝、まるでハリーポッターの映画のようだ。こんもりとした落ち葉の上に乗った途端、リツコの体は重心を崩し下に滑るように落ちそうになった‼️

「アー‼️」リツコは叫んだ‼️リツコは驚いた。ナント、家はリツコの遥か足の下、10mは下に地面と共に落ちているのだった。黄金のくれた杖が木の根に絡み、辛うじて下に落ちずにすんだ。リツコは上半身だけ、杖と木の根にしがみついた。恐怖で声が出ない。「ユウキ、ユウキ助けて‼️」と心に強く念じた時だった。

「今助けるからシッカリツカマレ‼️‼️」と言う声が聞こえた。

タイガーマスクと青いTシャツ。リアルエステート仮面だった‼️

リアルエステート仮面はその辺のツルを体に巻き、凄い力でリツコの腕を引っ張り上げた。リツコのバッグが下に落ちていく。リツコの体が地面にもどると、リツコはワンワン泣きながらリアルエステート仮面にしがみついた。リアルエステート仮面もその場でリツコをキツク抱きしめた。リツコは泣きながら、リアルエステート仮面の心臓のドキドキする音を聞いていた。

何分たったんだろうか、辺りが薄暗くなり始めた。このままズーッとこうしていたかったけど、日が沈んだら、歩けなくなる。リアルエステート仮面が「さあ、とりあえず普通の道に戻ろう」と言った。リツコが頷いてユックリ立つとリツコの手を引いて慎重に歩き始めた。戻る道の間、リツコは「このまま、ズーッと手をつないでいたい」と漠然と思った。来た時は、長い時間歩いた感じがしたけど、帰る時は1分ほどで占い師がいた道に戻った。

占い師、黄金は、もうどこにもいなかった。手に持ってた杖もいつの間にか消えていた。

ふと見ると、リアルエステート仮面の左腕が木でケガして血が出ていた。リツコは「ごめんなさい……」と又涙ぐんで、ポケットに入っていたハンカチで傷口を縛った。「大丈夫だ…さあ、東京に帰ろう」とリアルエステート仮面は言った。駅でリアルエステート仮面にお金を借りて2人で電車に乗り並んで座った。周りの人が全員2人を見たがリツコは全く気にならなかった。疲れてリツコは寝てしまった。気がつくとリアルエステート仮面は、もういなかった。

リツコは凄く淋しくなって、又涙ぐんだ。泥だらけのリツコは、やっとこさっとこ家に辿り着いた。

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「リアルエステート仮面10」への8件のフィードバック

  1. 連日お疲れにも関らず、素晴らしい想像力と表現力を発揮
    しての執筆に脱帽でございます!次も楽しみデス^^

  2. りつこさん、とんましてしまいましたね~♪
    でも、なんかドキドキ( 〃▽〃)してきましたぁ!

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