リアルエステート仮面③

・収益物件なら中川家!登録しないと始まらない

・不動産投資はこんなに怖い!失敗しないための個別相談会

・あなたにぴったりの投資法

たくさんヒットした。リツコは上司も消えたし、急ぎの仕事も無いし、食い入るように画面を見つめながら、かたっパジから凄いイキオイで読み始めた。「うーん、ナルホド〜スグに300万から1000万になる具体的な方法は、どうやら、どこかの誰かに直接聞かないとダメみたいだな~~~どの文面も細かい具体性まで載ってないなぁ……ウーン、取り敢えず、収益不動産ってヤツを売ってる会社に行って見るか……」リツコは少しクールダウンして、仕事をやり始めた。上司が早めに帰っていいと言っていたので、2時に切り上げる事にした。「チョット速すぎるかな……まあ、イイヤ」

リツコがいつも乗ってる電車の窓から広告が見える。「私達に、お任せください。キットあなたを満足させます。収益不動産、地域ナンバー1‼️」取り敢えずこの不動産会社に行ってみた。

「すみません………」「いらっしゃいませ〜」受け付けのキレイなお姉さんが出てきた。名札に森野と書いてある。「どのような御用件でしょうか?」「あの~~~私……収益不動産が欲しいんですよ〜」森野さんはリツコを見て笑顔だが、笑ってない目で「わかりました。少々お待ちくださいませ〜〜」と言って、奥の方へ消えて行った。奥から中年の高そうなスーツを着た男の人が出てきた。身長は169cmぐらい、体重は82kgぐらい。タバコ臭くて顔が黒い。腹だけスゴく出てる。「どういった物件をお探しで?」「あの……私、良くわからないんですが、雑誌で年収300万でも2年で年収1000万っていうのを読んで………」男はロコツにマタカっという顔をして、「アーーーそう、じゃあ取り敢えずこの用紙に記入して‼️」ナゼか、口調が強かった。用紙には住所、氏名、電話番号、働いている会社、年収、勤続年数、預金、資産背景など個人情報が全てわかるような質問が並んでいた。リツコはギョッとした。「すみません、これ書かないとダメなんですか?」男は明らかに、イライラしたカンジになった。「あんたね~~~収益物件っていくらぐらいのが欲しいのよ。あんたみたいな人がたくさん電話してくんの。紹介しようにも買えないんだったら意味ないでしょ⁉️」リツコはムッとした。「どうゆう意味ですか?」「だーかーらー、1億や2億もするような物件買うのに現金でポンって買えないでしょ⁉️」「はあ⁉️」「アー、あんたね~~~全然何にも知らないんだね〜〜。雑誌を読んでいきなり店に来る人も珍しいよ。」表情が少し優しくなり、「あんた、いくらぐらい預金持ってるの⁉️」と聞いてきた。リツコはさすがにこのぐらいは答えないとダメかと思い。「2000万ぐらいです………」と蚊の鳴くような声でボソボソと言った。トタンに男の顔が明るくなった。「家は持ち家?お父さんの?どの辺かだけ教えてよ〜〜。」オカマみたいに身体をよじりながら聞いてきた。顔が近い。しかも息が臭い。「あの、あの、私やっぱり失礼します‼️」リツコはバネ仕掛けの人形のように飛びあがり店を走って出ようとした。森野さんが冷たい麦茶をお盆に乗せながら「お客様~~~~!」と言っている。「ご、ゴメンなさい‼️」凄いイキオイで角を曲がると思わず膝を抱えてしゃがんだ。「はあ~~~~~~~~~怖かった…………」「イヤ、マジヤバイだろ」リツコはその態勢でしばらく考えた。「不動産を貸すんだから、どんな物件が人気があるか賃貸の不動産会社に行って聞けばいいんじゃん?」我ながらいいアイディアだと思った。スクッと立つと最寄り駅の目の前にある不動産会社に入った。ケインコスギが黄色いジャケットで揺れている。「いらっしゃいませ〜」全員が一斉に挨拶した。「どういったものをお探しですか?」「あの……私、収益不動産を購入しようと思っているのですが、どういった物件が人気がありますか?」「お客様が購入なさるのですか?」取り次いでくれた、若い男の子がビックリした様な顔で少々お待ちくださいませ〜〜と言って、店の奥のデスクでパソコンをイジッテいた男の人に耳打ちした。男の人はキラリと光る歯を見せながら颯爽と歩いて来た。身長179cm、体重78kgぐらい、どう見ても38歳ぐらいにしか見えないがキット48歳以上だろう。「お客様、収益不動産をお探しですか?」「は、ハイっつ❗️」爽やかな笑顔でこちらを見てる。「ヤバイ、い、イケメンだ~~~~‼️」リツコは心の中で叫んだ。顔が赤くなるのが自分でもわかる。

名札に速水と書いてある。「速水はイケメンの名前だな」などとくだらない事を考えていたら、サッとファイルを取り出し開き差し出した。「こちらが当店で取り扱える収益不動産でございます。失礼ですが、お客様はどの様な物件をお探しですか?」「あの、あの、2年で1000万ぐらいになれる様なの下さい‼️」叫ぶようにリツコは言った。他の従業員が下を向いてクスクス笑っている。速水さんは手を組むと「お客様、雑誌を読まれたのですね〜〜自己資金はおいくらぐらいですか?」「2000万ぐらいです。」速水さんの表情が変わった。「それは、スゴイですねー。お客様のご預金でございますか?」「ハイ」リツコはケチだった。小さい時から貰ったお金はほとんど使わずに貯めている。しかも、くじ運が良く、23歳ぐらいの時に初めてやったロト6で876万円当たったのだった。「今の会社は大学卒業してから変わりましたか?」「いいえ、ずっと同じです。」「ほおー真面目ですねー。失礼ですが、1人暮らしですか?」「いいえ、両親と弟と住んでます。今度弟が結婚して同居するので、自分もマンションでも買おうかなと考えている時に雑誌を読んだんです。」「なるほどーーそうだったんですね〜〜。お客様、こちらの店舗は賃貸物件がメインなんですが、私どもはこういった活動もしております。」と言って、おもむろにカラーコピーした紙を差し出した。そこには無料セミナーの案内が書かれていた。「お客様はラッキーですよ‼️ちょうどさっき一名だけキャンセルが出たんです。申し込みますか?」「あ、ハイっつ❗️是非‼️」リツコは差し出された申し込み用紙に氏名、住所、電話番号を書き込んだ。

つづく

  
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「リアルエステート仮面③」への4件のフィードバック

  1.  昨日は、有難うございました。アッと言う間に時間になって
    しまった感が有るのは私だけでしょうか、
     小説も楽しみでございます。また御指導のほど宜しくお願い
    申し上げます!

  2. 朝、通勤の電車で読んでいたら、新宿だった‼乗り過ごした( ;∀;)
    面白いです!逆戻りしました。

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