次の日、リツコはクタクタだったが、ナントカ会社に行った。会社について上司がリツコを見ると寄ってきたが、顔を一目見て「リツコ君、どうしたの?目の下のクマ…」と驚いたように言うので、リツコは上司を見て、昨日の事を思い出して、うかつにも涙ぐんでしまった。上司は物凄く驚いて、「イヤ~~~気のせいだったよ‼️全然何でもないよ〜〜‼️」と言ってバビューンと消えていった。
リツコは机の上にクリップで留めてあった簡単な仕事をひたすらやり始めた。何かやってないと気が狂いそうだから。何にも言わず仕事をしてお昼になった。そこへ、ユウキからメールがきた。
「今日は、6時から不動産屋さんをやってる友人と銀座で飲むんだけど、リッちゃんも御一緒にどう?」リツコは我に帰ったように、メールを返信した。「ぜひ、お願いします。」リツコは慌てて化粧室に行き自分を鏡で見た。………上司の言うようにクマがハンパない。その上、服装が適当というか、今日に限ってテントウムシのような白い水玉の赤いサーキュラースカートをはいている。しかも、よく見たら化粧していなかった。
「こんなことじゃいかん‼️」とリツコはコンビニに走って、パックと肌に良さそうな飲み物と食べ物、ついでにマツキヨによって目薬を買ってきた。昼休みの間、ひたすら顔を蒸しタオルで温め、その後パックをしながら、猛烈な勢いで仕事をした。4時半ぐらいには机の上に置かれた仕事は終わった。上司に持っていくと、「オ~~~~~~‼️リツコ君、いつもの調子が戻ったね〜〜お疲れ様‼️」と引きつった顔で言われた。
リツコはロッカールームで念入りに化粧した。服はもう、これで行くしかないがクマは消えた。上司に笑顔で「お先に失礼します~~」と挨拶して会社を後にした。リツコが去った後、「リツコ君、恋をしているのね………」と上司がシミジミと独り言をつぶやいた。
銀座は華やいでいた。約束の場所に行くと、ユウキは友人の不動産屋さんと立っていた。不動産屋さんはジローラモにソックリだった。「あーよろしくお願いします~~」とリツコが会釈をして、ふとユウキを見た時だった。
ユウキの左腕に包帯が巻かれている。リツコはハッとしてユウキの目を見上げた。
リツコを見る、優しい爽やかな瞳。
「同じだ。あの人と。ユウキがリアルエステート仮面だったんだ………」リツコは今までの事を一瞬にして思い返した。
リツコは感情が溢れ出し、涙と一緒に流れ出した。「ど、どうしたの⁉️」ユウキがオロオロすると、リツコは言った。
「あ、あ、あの ヒック グス、 そ、その、あの‼️私と結婚して下さい‼️」
ユウキは口を開けたまま言葉を失っていたがジローラモにソックリな友人が「オ~~~~~~‼️ユウキ頑張って‼️」と励ました。ユウキは友人に向かって「ごめん」と言うと、「リッちゃん、チョット一緒に来て」と言ってリツコの手を引いて歩き出した。
ニコリともしないで、ドンドン歩くユウキに引っ張られながら、リツコは不安でどうしようも無かった。「怒ってるのかな……」と突然ユウキがある店の前で立ち止まった。
「ティファニー銀座本店」
ユウキは中に入ると、プラナリアに似た店員に「君、この人に似合いそうな指輪を全部持ってきて。」と言った。店員は笑顔で「かしこまりました。」と言うと、ものの数分もしない内に、ベルベットのトレーにのせられた指輪をリツコにウヤウヤしく差し出した。
「わあ〜キレイ………」リツコは感激しながら指輪をみて、そして深い海の色のようなエメラルドの指輪を手に取った。「コレ、綺麗………」ユウキが店員に合図すると、店員とユウキが一旦店の奥に行き又戻ってきた。手に小さな四角いベルベットの箱を持っている。
リツコが座っているソファーの前までくると、リツコの前にひざまずき、その箱をパカット開けて、こう言った。
「リツコさん、僕と結婚して下さい」
それから、リツコの指にエメラルドの指輪をはめた。リツコは泣きながら、ユウキの首に抱きつき「嬉しい‼️」と叫び、小さな声で「大好き」と言った。ユウキは「その何倍も好き」と小さな声で言い、リツコを抱き抱えて、そのままクルクル回った。
リツコのスカートがまるで花のようにティファニーの中で翻った。「コングラチレーション‼️」「おめでとう‼️」ティファニーの中で声が上がった。
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